返済条件の設計と、分割で払う約束

返済条件の条は、契約書の中で最も読まれ、最も揉める条です。いつ・いくら・どこへ・遅れの起点を数字で決め、端数と休日まで書きます。

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月末払いを「翌営業日」にすると、年末や連休で翌月にずれ込みます。小さな書き方の違いが、毎月の返済のたびに解釈の違いを生みます。

このページの要点

  • 返済の型は、期日なし・期日に一括・均等分割・月額+加算月。加算月の型は、回数・最終期日・残高が計算で一致するかを必ず確かめる。
  • 休業日は「直前の営業日」と「翌営業日」で分かれる。振込名義を本人にし、着金の時点で履行とする定義を置く。
  • 一部の繰上返済は最終回から充当し、毎回の額は変えない。直後の期日の支払を免れないことも書く。
  • 充当の順序は合意で決められる(民法490条)。事業者が代金を2か月以上・3回以上に分けて受け取る割賦販売には別の規律がある。

結論:返済条件は「いつ・いくら・どこへ・遅れの起点」を数字で決め、端数と休日まで書く

返済条件の条は、契約書の中で最も読まれ、最も揉める条です。一括で返すのか分割で返すのか、毎月何日にいくらを、どの口座へ振り込むのか。分割の額が割り切れないとき端数をどの回に寄せるのか。返済日が土日祝日に当たったら前倒しか後ろ倒しか。早く返したいときは利息や手数料がどうなるのか。一部だけ返されたとき、どの債務に充てるのか。どれも当たり前に見えますが、書いていなければ、毎月の返済のたびに解釈の違いが生まれます。

アトラス行政書士法人の書類を比べると、返済条件の書き方には、期日を定めない型、期日に一括で返す型、毎月均等に返す型、月額に賞与月の加算を組み合わせる型があり、休日の扱いや繰上返済の扱いでも書き方が分かれています。このページでは、それぞれの型の書き方と、事務所が改訂で直した点を並べます。返済が遅れたときの一括請求は期限の利益の喪失、利率は利息と遅延損害金のページで扱います。

返済の型:期日なし・期日に一括・均等分割・月額+加算月

事務所の書類に見る返済の型

型条文の書き方の要点向く場面・注意
期日を定めない型「乙が資金を確保し次第、甲に通知し、協議の上合意された日時に返済する」、または「返済期日は定めない。甲から返済の請求があった場合、乙は合理的な期間内に返済する」。親族間など。返還時期の定めのない消費貸借として民法591条の扱いになる。遅れの起点がないので、一括請求の条と組み合わせにくい。
期日に一括で返す型貸付から約1年後の特定の日を弁済期限とし、元金と利息を一括で返す。期限前の一括返済は損害賠償なしで認める。事業資金など、まとまった入金の予定がある場合。期限前返済の扱いを書かないと、民法591条3項の損害賠償が問題になり得る。
毎月均等に返す型毎月末日までに一定額を返し、最終回だけ残額を払う。各回の額と期日を表にする型もある。個人間の中・少額の貸付。端数の寄せ方と休日の扱いを必ず書く。
月額+加算月の型通常月は月額を返し、指定した月(賞与月など)に加算額を上乗せする。合計回数と最終期日を書く。収入に季節の波がある借主。加算月の回数と残高の計算が合っているかを必ず確かめる。

期日に一括で返す型で、期限前の返済について「乙は、第1項の期限前に、本貸付金を一括にて返済することができる。この場合において、乙は、甲に対し、何らの損害賠償義務を負わないものとする」と書いた例があります。民法591条3項は、返還の時期を定めた場合に借主が期限前に返して貸主が損害を受けたときは、貸主が賠償を請求できるとしています。利息付きの貸付では、期限まで受け取れたはずの利息が問題になり得るので、期限前返済を認めるなら、損害賠償の有無を条文で決めておきます。

毎月の期日に幅を持たせる書き方もあります。立替金を元本にした契約では、「毎月25日から同月末日までの間に」振り込む、としていました。給料日の違いなどに合わせやすい反面、遅れたかどうかは幅の最後の日(末日)で判断することになるので、期限の利益の喪失や遅延損害金の条でいう「支払期日」が末日を指すことを、言葉をそろえて明確にしておきます。

月額+加算月の型は、組み立てを間違えやすい型です。事務所で扱った債務弁済契約書では、締結前に計算を点検したところ、当初の案の開始月のままだと、返済開始の月から数えて最後の回が最終期日より後にずれ込み、加算月の回数も合計回数と合っていませんでした。改訂では、開始月と加算月を見直し、締結時の残高が「月額×残りの回数+加算額×加算月の回数」とぴったり一致するように組み直しています。月額と加算額、回数、最終期日の四つは互いに連動するので、どれか一つを変えたら、残りの三つを必ず計算し直します。

月額+加算月の型を組むときの確かめ方

確かめること計算の考え方
最終期日返済開始月から合計回数を数えた月が、条文の最終期日と一致するか。
加算月の回数開始月から最終期日までの間に、加算月が何回入るか。条文に列挙した月の数と一致するか。
残高との一致締結時の残高=月額×残りの回数+加算額×加算月の回数、になっているか。
支払済みの回数「そのうち○回分は既に履行済み」と書くなら、総債務額−残高と、月額×○回が一致するか。

この四つは、どれか一つを修正したら必ず全部を計算し直します。

端数・休日・振込名義・着金の時点

均等分割で割り切れない金額は、どこかの回に端数を寄せます。事務所の書類では、6回払いで第1回から第5回までを同額とし、第6回だけを数円多くする形を表にしたもの、毎月同額を返して最終回だけ残額を払う形を文章で書いたもの、があります。どちらでもかまいませんが、条文と表の金額の合計が元本と一致しているかを確かめます。

返済日が金融機関の休業日に当たる場合の扱いは、書類によって分かれています。

休業日の扱いの書き分け

方式条文の書き方考え方
直前の営業日「返済日が金融機関の休業日に当たる場合には、乙は翌営業日に支払うのではなく、当月をまたがない直前の営業日までに返済しなければならない」月末払いで翌営業日にすると翌月にずれ込み、月をまたいでしまう。毎月の返済が月内に収まることを優先する。
翌営業日「返済期日が金融機関の休業日にあたるときは、その翌営業日を返済期日とする」借主にとって分かりやすく、一般的な書き方。月をまたぐことが問題にならない期日(15日・25日など)なら使いやすい。

どちらを選ぶにしても、期限の利益の喪失の条にある「支払期日」と同じ意味になるよう、条文の言葉をそろえます。

均等分割で端数を最終回に寄せる表の例(金額は説明のための例)

回返済期日返済額
第1回令和○年○月末日16,666円
第2回〜第5回以後毎月末日各16,666円
第6回令和○年○月末日16,670円
合計―100,000円

表に合計欄を置き、元本と一致することを署名の前に確かめます。振込手数料を借主の負担とするなら、表の金額は手数料を差し引かずに着金すべき額であることも条文に書きます。

振込の名義にも決まりを置いておくと便利です。事務所の書類では、分割で支払を受ける側の口座への振込について、「振込依頼人の名義を乙の氏名とする」と定めた例があります。家族や勤務先の名義で振り込まれると、誰が払ったのか、どの債務の支払なのかが分からなくなるからです。

いつ支払ったことになるのか、も定義しておきます。事務所が扱った債務弁済契約書では、「弁済は当該金額が債権者の指定口座に着金した時点をもって履行されたものとみなし、振込指示の送信時点では履行と認めない」と書きました。返済日の夜にネットバンキングで振込を指示し、着金が翌営業日になった場合に、遅れたのかどうかで揉めないようにするためです。同じ契約では、毎月の振込が着金していれば別途の返済報告は不要とし、貸主が合理的な理由で照会したときは3営業日以内に振込明細の写しを示す、という運用も条文にしています。

条文例第○条(返済の方法) 均等分割の例

1乙は、本件貸付金を、次表のとおり6回に分割して、各返済期日限り、甲が指定する預金口座に振り込む方法により返済する。振込手数料は乙の負担とする。

2返済期日が金融機関の休業日にあたるときは、その翌営業日を返済期日とする。

3乙は、前項の振込みをするときは、振込依頼人の名義を乙の氏名とする。

4返済は、各回の返済金が甲の指定口座に着金した時点をもって履行されたものとする。

表には各回の返済額・返済期日と合計額を入れ、合計が元本と一致することを確認します。

繰上返済と一部返済:最終回から充てて、毎回の額は変えない

借主が予定より早く返したいとき、あるいは約定の額より多く返したときの扱いも、書類によって大きく違います。

事務所の書類に見る繰上返済の扱い

  1. 1無利息なので清算金なし・一部は最終回から充当「本件貸付金は無利息であるため、繰上返済に伴う利息の清算金及び手数料は生じない」。一部の繰上げは協議で定め、定めがなければ最終の返済回から順に充当し、各回の期日と額は変えない。借主に有利でわかりやすい。毎回の返済額が変わらないので、管理も楽。
  2. 2割引・減免は一切なし・着金で有効繰上返済は7営業日前までに書面かLINE等で通知し、着金時点で有効。割引・利息の減免・元本の軽減は一切適用しない。全額を繰り上げたら、債権者が債務消滅を確認する。無利息の貸付で、早く返しても得にならないことを明確にする書き方。
  3. 3約定額以上の任意返済は可・約定額未満は不可各回の約定返済額を超えて返済でき、超過分は元本に充当する。約定額に満たない金額での返済はできない(貸主が事前に書面で承諾した場合を除く)。少しずつしか払わない状態を防ぐ書き方。
  4. 4解決金の分割で、繰上げは最終回からさかのぼって充当残額の一部を繰り上げて支払ったときは、最終回の分割金から順次さかのぼって充当し、その直後の期日の分割金の支払を免れない。繰り上げた翌月を払わなくてよい、という誤解を防ぐ。

反対に、繰上返済を制限したいと考える貸主もいます。ただ、繰上返済に貸主の承諾を要するとし、繰り上げた額の一定割合を違約金や補償金として取る、という設計には注意が要ります。借主はもともと、返還の時期の定めの有無にかかわらずいつでも返すことができ(民法591条2項)、貸主が受けた損害の賠償の問題になるだけです(同条3項)。無利息の貸付で繰上返済の違約金を取ると、利息制限法3条のみなし利息(名目を問わず、債権者が元本以外に受け取る金銭を利息とみなす規定)として扱われるおそれもあります。繰上返済を制限する必要があるかどうかは、貸付の目的から慎重に考えます。事業への出資と貸付を組み合わせるときの問題は、出資と貸付の違いのページで扱います。

「毎月○円以上」の最低額方式は、完済の見通しを表で示す

毎月の返済額を固定せず、「毎月25日から同月末日までの間に、金○円以上を振り込む」という最低額方式を選ぶこともあります。借主の収入が月によって変わる場合や、余裕のある月に多めに返してもらいたい場合に向いています。事務所がレビューした立替金の契約の下書きでは、当初の最低額が低く設定されていたため、借主の負担を抑える配慮としては理解できるものの、元本の減りが遅すぎて実質的に回収できないまま時間が経つおそれがあると指摘し、借主の負担可能性を考えたうえで現実的な水準に引き上げるか、半年ごとに返済状況と収入状況を確認して見直す協議を入れるよう提案しました。依頼者は、2回目の下書きで最低額を引き上げています。

再レビューでは、引き上げた額でも元本が大きければ完済まで長くかかることを指摘し、返済スケジュールを明記して「○年で完済を目標とする」と書くこと、返済状況の定期的な報告を求めることを勧めました。最低額方式は、払う側にとっては柔軟ですが、受け取る側にとっては、いつ終わるのかが見えにくい方式です。最低額で払い続けた場合に何回で完済になるのかを、別紙の返済見込み表で示し、借主の同意を得ておくと、両者の見通しがそろいます。返済の見直しの手続は返済猶予・条件変更のページで扱います。

なお、最低額方式でも、振込のたびに報告を求めるかどうかは決めておきます。立替金の契約では、振込が完了したら借主がその旨をメッセージアプリなどで貸主に通知する義務を置いていました。反対に、先に触れた債務弁済契約書では、着金していれば報告は不要とし、貸主が合理的な理由で照会したときだけ明細の写しを示す、連続して2回以上の未履行や遅延があれば報告の省略の合意を撤回できる、としています。報告を求めるかどうかは、貸主が口座の入金を自分で確かめられるかどうかで決めるとよいでしょう。

弁済の充当:費用→遅延損害金→元本の順を合意しておく

弁済の充当とは、支払われたお金を、複数ある債務(元本・利息・遅延損害金・費用など)のどれに充てるかを決めることです。民法は、元本のほかに利息と費用を払うべき場合、全部を消せない支払は順に費用、利息、元本に充てると定め(民法489条1項)、当事者が充当の順序を合意していればその順序によるとしています(民法490条)。

事務所の書類では、充当の順序を契約で決めておく型と、全額を元本に充てる型の両方があります。法人から個人への貸付では、「乙の弁済その他甲が受領し又は回収した金員が、乙が甲に対して負担する債務の全額を消滅させるに足りないときは、民法の弁済充当に関する規定にかかわらず、甲は、その裁量により、費用、遅延損害金、元金の順序その他甲が適当と認める順序及び方法によりこれを充当することができる」と書きました。作成前ヒヤリングシートでは、この順序を「貸主に有利な順序」と注記したうえで、採否を選んでもらっています。所有権留保付きの売買では、民法488条・489条の適用を排除すると明示した例もあります。

一方、立替金を元本とした契約では、「乙が甲に対して支払う返済金は、その性質および履行の時期を問わず、全額を本件元本の返済に充当する」としています。利息も遅延損害金も取らない設計なので、元本に充てるほかないためです。充当の条は、利息や遅延損害金の条と必ずセットで読み、矛盾がないかを確かめます。

商品の代金を分けて払う約束:割賦販売と所有権留保の要点

お金を貸すのではなく、商品やサービスの代金を分割で受け取る約束も、返済条件の書き方は共通しています。ただし、事業者が指定商品・指定権利・指定役務の代金を2か月以上の期間にわたり3回以上に分けて受け取る場合は、割賦販売法の割賦販売(同法2条1項1号)に当たり(購入者が営業のために結ぶ契約などは、同法8条で適用が除かれます)、支払が遅れても20日以上の相当な期間を定めて書面で催告しなければ、契約を解除したり残りを一括で請求したりできない(同法5条1項)など、独自の規律がかかります。講座の代金などの分割払いについては、事務所が運営する別のガイドで詳しく扱っているので、このサイトでは要点にとどめます。

自動車を分割で売る契約では、事務所は所有権留保の形をとっています。代金を完済するまで所有権を売主に残し、自動車登録上の所有者を売主、使用者を買主として登録する、という形です。改訂では、各項の主語(甲・乙)を明示し、使用・保管・維持に要する費用を号で並べ、期限前の弁済について違約金や繰上弁済手数料を請求しないことを書き加えました。分割の途中で支払が止まったときの車両の返還と精算の順序も条文にしています。期限の利益の喪失との関係は、期限の利益の喪失のページで触れます。

精算の順序は、返還を受けた車両を売却などで換価し、その代金を、回収・保管・運搬・売却など換価に要した費用、修理や原状回復の費用、遅延損害金、損害賠償金、未払の売買代金の順に充て、なお不足があれば買主が支払い、余りがあれば売主が返す、という形です。所有権留保の契約では、売主が車両を取り戻したうえで、残りの代金も全額請求する、という二重取りにならないよう、換価代金を債務に充てる順序と余剰の返還を書いておくことが欠かせません。また、車両の引揚げについて、買主があらかじめ立入りと引揚げを承諾する条項を置いても、買主の意思に反して実力で取り戻すことは自力救済として違法と評価されるおそれがあります。返還は、買主による任意の引渡しか、法的な手続によるのが原則と考えて条文を組みます。

聞き取り票 返済条件を決める前に

  1. 一括で返すか、分割で返すか。分割なら毎月の額、回数、初回と最終回の期日は。期日が決まらなければ、遅れの起点も一括請求の条も働きません。
  2. 毎月の返済日は何日か。休業日に当たったら前倒しか、後ろ倒しか。月末払いで後ろ倒しにすると月をまたぎます。期限の利益の喪失の条の「支払期日」と言葉をそろえるためにも決めておきます。
  3. 繰上返済を認めるか。一部の繰上げはどの回に充てるか。毎回の返済額を変えないなら、最終回から充当すると書きます。
  4. 振込手数料はどちらが負担するか。振込名義に決まりを置くか。手数料分だけ不足した、という小さな未払いが、後で一括請求の理由として争われることがあります。
  5. 賞与月の加算を入れるか。入れるなら、どの月に何回か。加算月の回数と合計回数、最終期日、残高の計算が一致するかを確かめます。

よくあるご質問

分割の端数は、どの回に寄せればよいですか。

最終回に寄せる書き方が多く使われます。第1回から最終回の前までを同額にし、最終回で残額を払う形です。どの回に寄せる場合も、表の合計が元本と一致しているかを確かめます。

返済日が土日祝日のときは、前と後のどちらにすべきですか。

どちらでもかまいませんが、月末払いで「翌営業日」にすると翌月にずれ込むことがあります。月内に収めたいなら「当月をまたがない直前の営業日」と書きます。15日や25日払いなら翌営業日でも問題になりにくいです。

繰上返済をされたら、利息はどうなりますか。

無利息の貸付なら、清算すべき利息はありません。利息付きの貸付では、期限前に返されたことで貸主が損害を受けたときは賠償を請求できる(民法591条3項)ので、損害賠償を求めないなら、その旨を条文に書いておきます。

賞与払いを入れるときの注意は何ですか。

加算する月と回数、通常月の額、合計回数、最終期日、締結時の残高が、互いに計算で一致していることを確かめます。一つを変えたら全部を計算し直します。

一部だけ支払われたお金は、何に充てればよいですか。

当事者が順序を合意していればその順序によります(民法490条)。合意がなければ、費用、利息、元本の順になります(民法489条1項)。契約書では、費用→遅延損害金→元本の順を合意しておく書き方が多く使われます。

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